理事長のためのファシリテーション技術(10) 理事会を触発する③

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前回まで、「理事会を触発する方法」について、ご説明しました。
 
今回は、3回目として、「発散」と「収束」のシナリオについて、記載します。
 

 

■発散だけでなく収束のシナリオを描く

 

 

活発に議論される雰囲気が醸成された理事会となった後、理事長として考慮しておかなければならないことは、「発散だけではなく、収束のためのシナリオを描いておく」ということになります。
 
理事会のメンバーと理念を共有し、「バズセッション」などの機会を持ちながら、理事同士が互いに知り合いとなって、理事会全体の議論が盛り上がったとしても、議論を収束させていかないと、まとまりのない理事会が毎月繰り返されることになります。
 
毎月の理事会が、なかなか収束せず、時間ばかりが多くかかっていては、理事に無力感が漂い、折角盛り上がりを見せた理事会も、いずれ、よくない雰囲気になるでしょう。ボランティアで参加する理事には、時間が限られていますので、効率的な理事会運営が求められます。効率的で、円滑な理事会運営を目指すためには、理事長が、収束方法を考えることが必要です。以前にご説明した「理事会のデザインをする」に重複する部分がありますが、再度、ここで、ご説明します。
 
理事会で、理事が自由な発言で、議論を活発に行い、発散させていくことは、新しい気づきをもたらす側面があります。一方で、あまりにも議論が拡散しすぎ、いつまでも収束しない側面もあります。これは、理事長が、収束プランを考えずに理事会に臨んでいることに原因があります。
 

 

■「専ら住居専用」のマンションで「インターネット事業」を始めたい居住者からの相談

 

 
具体的な事例で考えてみましょう。例えば、あるマンションで、居住者から、「自宅でインターネットによる古着の販売をしたいので、警察に届け出る古物商許可申請書に、理事長の捺印をもらいたい」との依頼があったとします。一方で、マンションの規約には、「専ら住居専用」としてマンションを利用を制限する制約条件があります。
 
理事会での議論は、二つに分かれました。一つは、「規約に則り、このような依頼は、しっかりと断るべき」との意見。もう一つは、「インターネット時代で、自宅で仕事を営む方は沢山いる。自身、デザイナーとして、自宅で仕事をしているが、規約に則ると、これも制限することになるのか?」という意見です。さて、理事長として、理事会をどのような結論に導いていけばよいでしょうか?
 
解決策として、ひとつに「断る」ということが考えられます。しかし、そうすると、潜在的に既に自宅を仕事場として使っている居住者との齟齬が発生します。二つ目の解決策として、「規約を変更する」ということがあります。しかし、「専ら住居専用」の規約を変更した場合、マンションを商売のできる場所として認めることとなり、総会での決議も紛糾することが予想できます。

 

 

■規約条文「専ら住居専用」の本質を考えてみる

 

 

このケースで、双方ともに納得する解決策を考える際に、重要なポイントは、規約にある「専ら住居専用」という制限の背景にある根拠を考える必要があるという点です。つまり、マンションが住居専用とする理由はいったいなにか?ということを十分に考えます。
 
例えば、考えるに、マンション内で、商売が行われた場合、不特定多数のマンションへの出入りによる喧噪の可能性が高くなります。また、、防犯面においても懸念材料が増えます。この条項は、これを意識した規約であるといえます。
 
インターネットの時代ですから、自宅で仕事を行う方は、今後も増えるでしょう。「専ら住居専用」という規約を頑なに守り、自宅では、一切仕事をしない、という話もなかなか考えづらいことです。
 
要するに、マンション内に外部から不特定多数の人が訪れ、近隣住戸に多大な迷惑がかかる状態や、安全面で特別の配慮が必要となる状態が「ない」状態の仕事であれば、古物商については、許可してもよい、という結論を導くことも可能です。

 

 

■インターネット時代の自宅での仕事

 

 

物商の認可を取りたいと申し出た居住者にこの点を確認したところ、「インターネットを使った事業なので、顧客が自宅に来ることはない。」、「古着の在庫も自宅に置かず、外の倉庫を利用する予定」とのことがわかりました。
 
この事実を確認したうえで、結果として、理事会では、この居住者に「近隣への迷惑行為や、安全面で問題となった場合は、事業をストップする」という旨の「念書」を合わせていただくことで、「古物商申請書」対応することとなりました。

 

 

■収束のシナリオを描く一方で、固執しないフレキシブルさも必要

 

 

以上、具体的な事例を取り上げ考えてみましたが、いかがでしょうか?
 
上記で上げた解決策が最善策とはいえません。他の対応も考えられるでしょう。
 
ここで、お伝えしたかったことは、理事長は、拡散と収束のバランスある理事会運営を目指すのであれば、まず、ある程度仮説(シナリオ)をもって、理事会に臨む必要があるということです。
 
ただ、ここで、考慮しなければならないのは、その仮説にこだわらないフレキシブルな姿勢も一方で必要となります。あまりにも自分の仮説に、拘りすぎると、理事長自身が孤立していく可能性もありますので、注意しなければならないポイントです。
 
次回は、「理事長のためのファシリテーション技術」の最終回として、「理事長に求められる事」をまとめてお伝えします。
 

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アゴリア㈱ TGK本部 エバンジェリスト
*TGKとは、「地域コミュニティを元気に変える」の略称です。