マンション管理組合におけるリーダーシップ(11) 理事長のバランス力 ③(意思決定)

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組織において、意思決定が欠かせないことであることは、ご承知の通りです。それは、企業のトップであれば当然のことですが、非営利組織であるマンション管理組合の理事長にとっても意思決定が欠かせません。

 

意思決定には、責任が伴い、必然的に、リスクが表裏一体の関係として存在します。そのため、決断する勇気が必要ですが、理事長によっては、その責任に負担を感じている方もいるように思います。

 

マンション管理組合の意思決定が、基本的に、ダイバーシティ(多様性)の中での合議制であることを基本に考えれば、理事長の「意思決定」の難しさに負担を感じることは容易に想像がつきます。

 

 

マンション理事長の意思決定負担を和らげるには?

 

 

前回、「意思決定マトリクス」により、マンションに生じる課題を4つの象限でカテゴライズすることをお伝えしました。

 

理事長の「意思決定」の負担軽減を考えた場合、合議制であることを逆手にとらえて上手に納得性の高い意思決定に結び付けることができるように考えています。

 

例えば、前述の図「意思決定マトリクス」における、第一象限にある、大きなイベントである大規模修繕の実行計画の議案を諮る場合、理事長が独断的に進めることは、当然のことながら避けるべきです。

 

常に、管理組合全体のことを考え、長期的な視野で、できる限り多くの区分所有者の賛同を集めることに労力を惜しんではいけません。

 

ここでの理事長としての意思決定におけるポイントは、100かゼロか、是か否か、を諮る前に、いくつかの考えられる選択肢の中で、アンケートを取るなどして、全体的な方向性を絞り込んでいく作業を丹念に行うことになります。

 

具体的には、例えば、大規模修繕において、設計会社に提示させたAプラン、Bプラン、Cプランのどれが良いか?を、区分所有者にアンケートや住民説明会を行うことで、意識調査を繰り返すということになろうかと思います。

 

(これは、企業戦略における戦略的代替案ともいえるものです。)

 

最終的に、理事長、理事会の意思決定を経て、総会議案となりますが、議案のAプランになった根拠を、意識調査によるものとすれば、理事長の意思決定における負担感は、大きく軽減されることでしょう。

 

 

迅速な意思決定が求められるケースには理事長はどう対応すべきなのか?

そこには、敢えて意思決定をしない選択肢が!

 

 

一方で、「意思決定マトリクス」における第4象限にある個別問題で、理事長には迅速な意思決定が求められるケースが沢山あります。

 

「意思決定」の責任やリスクに慣れた理事長であれば、速やかに、方向性を導くと思います。

 

しかし、「意思決定」に慣れていない理事長の場合、数か月たっても、区分所有者から要望のあった問題について、的を射た解決策を導き出せずにいることもあるのではないでしょうか。

 

最悪なのは、滞る間に、更に問題が深刻化するケースも考えられます。

 

例えば、隣接住戸の騒音問題に日々悩んでいる居住者から、解決を求められた理事会がありました。

 

ここでの判断として、ひとつは、個別の問題なので、理事会が関わることはできないとする方法があります。

 

しかし、理事会が、「われ関せず」とされた居住者側の気持ちは、推して知るべきでしょう。

 

理事長としては、ここで、何らかの判断をするのではなく、理事が複数人立ち合いのもとで、両方の居住者を、一度、引き合わせる場を設けるという方法が、あります。

 

もちろん、話し合いの場では、理事長は常に中立的な立場で言動することを厳重に守らなければなりません。

 

具体的に私が経験したケースですと、双方の言い分を互いに述べたあと、騒音を消そうと日々努力していることを理解した居住者は、それ以降、騒音問題で理事会に解決策を求めることなく無事収まったということがありました。

 

マンションは、区分所有とは言っても、壁一つを隔てた共同生活の場ですので居住者のお互いに対する配慮が欠かせません。また、その配慮が、顔を合わせ、お互いに、目に見える形でわかれば、多少の騒音では、気にならなくなる場合も多いのではないでしょうか。

 

ここでのポイントは、敢えて、意思決定をするのではなく、事実関係を明らかにして、区分所有者の個々の利益が、衝突する際には、会う機会を設けて、互いに、「共同の利益」の理解を深めていく、手段もあるということになります。

 

以上のような事例を取り上げましたが、理事長にとって、「意思決定」は、避けられるものではありません。

 

ドラッカーは、「意思決定は、行動へのコミットである」と語っています。

 

責任とリスクを伴った「意思決定」をする理事長の勇気ある言動に、理事会メンバーは、共感を得て行動するものです。

 

理事長には、是非、時と状況に応じて、バランスの取れた「意思決定」にチャレンジしていただきたいと願います。

 

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アゴリア㈱ TGK本部 エバンジェリスト
*TGKとは、「地域コミュニティを元気に変える」の略称です。